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相方と家族。

相方と家族。

皆さん、はじめまして。大阪の吉本興業でツートライブというコンビをさせてもろてる周平魂と申します。夢は有名な漫才師になることです。

読んでる方は分からないと思いますが〆切を大きくすぎて3日が経とうとしています。

「ありがとう」について考えすぎていったん訳が分からなくなり、今何となくまとまりつつあります。まとまってない分長くなりますが読んでいただければ幸いです。

「ありがとう」と、言うことは大切なことですが、言うことは意外と簡単で。でも「ありがとう」と根っこから思うことはなかなか難しくて面白くて笑いそうになったり、泣きそうになってまうくらい感情が込み上がってくる言葉やと僕は思います。

僕は大阪で漫才をやり続け有名になれないまま15年がたちました。今16年目です。

昨年、結成15年までの大会であるM1グランプリが終了しました。僕らは2017年から2022年まで6年間準々決勝で敗退しました。毎月単独ライブをやり、1年間に50本近くのネタを作り続けるのを6年間やっても準決勝以上には上がれませんでした。

ラストイヤー2023年11月20日月曜日、M1グランプリ準々決勝。場所はなんばグランド花月。ここで勝つと準決勝、準決勝で勝てば決勝。決勝の1本目で勝てば最終決戦、それで勝てば優勝。

僕は優勝する気で漫才をしていました。

知らない方に説明させてもらうと、M1グランプリは準々決勝以降はネタ時間4分間の大会です。

準々決勝の時点で、あと16分間、その間最強に面白くあり続ければ夢のM1チャンピオンになれるんです。

ただ、準々決勝の壁は厚すぎて過去6回、楽しくもなくウケる訳でもなく、自分の漫才の型も崩れ、自分たちの色もだせず、そんな6年間が続いていました。

ラストイヤー。ここで負けるということはあと4分間で僕たちのM1グランプリは終わります。

準々決勝当日の舞台袖はというと、毎年毎年色んなことが頭の中を錯綜し、緊張と4分間という短いようで暗くて長い時間が頭の中をぐるぐる周り。舞台に飛び出してからの4分間が好きな自分の姿ではない一年前や二年前の自分がごびりついてとれないまま舞台に出て行く2022年迄の6年間。

2023年ラストイヤーこれをどう振り払うか。出番直前舞台袖。目の前に相方の背中がありました。ずっと何してんねやろコイツ。

笑けてきました。
相方と僕は大学時代のツレです。20歳の時に出会い20年、芸人してからは毎日のように顔合わせながら15年。「これなにしてんねん!」オッサン2人で緊張してバカなことを喋りに出ていき、800人以上の人の前で発表することに緊張してる。「コイツほんまにアホやな。」

これが僕の心の中で言った相方への「ありがとう」でした。

後日結果がでました。僕たちのM1グランプリはラストイヤーも準々決勝の4分間で終わりました。

でもその4分間の漫才はめちゃくちゃ楽しかったです。自分たちの好きな姿をみんなに見せることができました。チャンピオンにはなれへんかったけど、チャンピオンになるつもりやった16分間、その16分間以上の長い時間を漫才で喋っていきたいな、と心から思えた4分間でした。

そんな自分の中での納得とは乖離して敗退の結果を伝えにくい相手は奥さんでした。奥さんは10年以上の付き合いで結婚してからも7年近くの月日が経っていました。息子は3歳。結婚当初、月収4万円、バイトを3つ掛け持してる僕。そんな僕に対し芸人としての仕事に対しては何も言わずに無言で支え続けてくれていました。逆に「頑張れ」とか言われたこともありません。
唯一、M1ラストイヤーの準々決勝直前、ふとした瞬間に「最後くらい頑張りや。」とボソっと言うてくれるような男前な嫁です。

ラストイヤー準々決勝敗退の結果は昼過ぎに喫茶店で1人で見ました。奥さんに伝えることができないまま夜になりました。帰る前、さすがにと思いLINEで奥さんに結果を伝えました。内容はあかんかったわ、奥さんにとっても息子にとってもかっこええ姿見せれへんかったけど、とりあえずM1は終了した。的なことでした。
既読にはなったものの特に返信はありませんでした。

家に帰ると家の中は真っ暗。あれ?と思い、嫁と息子の名前を呼ぶM1終了した男。
クローゼットの中に隠れてた嫁と息子。嫁にしこまれたのか、飛び出してきた3歳の息子が「トト!(息子の僕の呼び名)トトはカッコいいよ!お仕事いつもありがとうね!」
言わされてるやん!
笑けてきました。
でもその面白さが異様に優しくて
僕は込み上げる感情に押し出された目から溢れる涙を嫁と息子に見られるのが恥ずかしくてトイレに行きながら放った言葉が「なんやそれ!ほんまか!訳分かってへんやろ!」

これが僕の心の底からの本気の「ありがとう」でした。

はたから見ると大したことやないかもしれませんが僕の人生の中では大きな、相方と家族との一幕で普段はなかなか難しい心の底から「ありがとう」を思えたのは良かったかな、と思います。

その瞬間は相方にも嫁にも息子にも、相手にこの「ありがとう」は伝わってないかもしれませんが、「ありがとう」と本気で思えました。

こんなに本気の本気で「ありがとう」と思うのは難しいんやと思ったことで、40歳を超えた今はもう少し気楽に「ありがとう」を思えるようになったかな?と思います。

なかなか難しいコラムのお題「ありがとう」でしたが、こういうことを考える機会を与えてくれた誠子、ありがとう!と今、淀屋橋の自転車置き場で気楽に思えてます。

長々となってまいましたが読んでくれてありがとうございました。

【Profile】
周平魂。
正味の話、吉本興業所属。京都出身。乙女座のB型。神戸で出会った広島出身の相方と大阪で漫才してます。コンビ名はツートライブ。ボケ・ニュアンス担当。有名な漫才師になりたいです。

Instagram @shuheidamasii